検索履歴を消そうとして途中で手が止まり、残っている文字列を見てしまうだけの時間が続いている。
何も起きていないはずなのに、消す動作だけが何度も繰り返されて完了しない。
視線が一度外れたのにまた戻るのを、自分でも少し遅れて気づく。
Sはその様子をただ見ているだけで、急かすことも説明することもない。
指先が軽く震えたまま画面の上で止まり、呼吸だけがやけに意識される。
豊橋日中の静かな時間帯を思い浮かべても、そこに自分が立つ想像だけが先に進んでしまう。
また同じように消して終わる。
やり取りだけでもいいという言葉が一瞬だけ頭をかすめるが、すぐに押し戻される。
そのまま戻るだけになる流れから抜けられないまま残る。