閉じようとしていた指が止まり、画面だけが昼の部屋に残る。
こんな歳で何を考えているんだと打ち消そうとしても、視線はまた戻ってくる。
男に責められたいなんて自分には関係ないと思いながら、掲示板を消したあとも胸の奥だけが静かに残っている。
経験もないし、自分がMなのかも分からない。
ただ、普通の会話だけでは消えない感覚が、夜ではなく昼に浮いてくる。
豊橋日中。その言葉を何度も見返しながら、送る理由を探しているうちに、指先だけが先に動く。
「気になっています」だけ打って、消して、また打ち直す。
長い説明を書こうとして止まり、結局短い文だけ送信する。
返事を待つ間、呼吸だけが妙に浅くなる。
こちらは、そういう迷い方を何度も見ている。
無理に背中を押すことはしない。
ただ、玄関前まで迷ったまま来る空気も、昼の駅から歩く速度も、黙ったまま部屋を見回す視線も、最初から含まれている。
何をされたいのか決まっていなくても止めない。
決めきれないまま豊橋へ向かい、途中で引き返そうか考えながら、それでも昼の改札を抜ける。
そういう動きの先で、ようやく自分の欲求に触れる人は多い。
だから最初のメールは短くていい。
「少し気になっています」だけ送れば、その続きを考えるのは、玄関の前に立ってからでも遅くない。